吟行投句部門入賞作品

●佐藤艸魚選
	特選（3人）
	秋天を跳ね上げてゐる天守閣城垣に撥ね返されてゐる秋日ふりむきて人の居らざる秋の風	川野　智子（大分県三重町）嶋田　光子（熊本県熊本市）上須崎　かつ美（熊本県熊本市）
	入選（5人）
	時生まれ時消え城の秋深む城は世を経るまま落葉積むままにやがて日の洽かりけり帰り花城小春こころ順路に従はず秋天の引つ張つてゐる天守閣	坂田　美代子（熊本県西合志町）坂田　美代子（熊本県西合志町）上須崎　かつ美（熊本県熊本市）上須崎　ゆたか（熊本県熊本市）牧野　立身（熊本県植木町）

●星永文夫選
	特選（3人）
	城小春こころ順路に従はず城大樹瘤隆々と冬に入る日本晴城の過客に木の実降る	上須崎　ゆたか（熊本県熊本市）つのだ　ともこ（熊本県熊本市）竹下　ツタエ（熊本県熊本市）
	入選（5人）
	末枯の風の軽さに城めぐる肥後菊の掟きびしくつぼむ数秋の蝶城に用あるごと急ぐ小春日の人の声にも日の当り虫籠にお城を少し持ち帰る	田村　良子（熊本県熊本市）石塚　和子（熊本県熊本市）尾辻　和子（鹿児島県鹿児島市）西　美愛子（熊本県熊本市）上須崎　かつ美（熊本県熊本市）

●前田　忠を選
	特選（3人）
	嚏して漱石の髭動く秋一日の余白に城の秋惜む石垣を曲れば変る秋の風	山田　節子（熊本県砥用町）山崎　ルリ子（熊本県西合志町）水上　翆人（福岡県直方市）
	入選（5人）
	古井戸のその中冬の孤独かな生活より少し離れて肥後菊に象さんに成り切る夫や秋日和秋風は絹の水紋古城濠落葉踏む音によろこびかくし得ず	東　ヤス子（熊本県熊本市）石塚　和子（熊本県熊本市）粟津　玲子（熊本県熊本市）吉井　みつき（熊本県熊本市）上須崎　かつ美（熊本県熊本市）